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健康コラム

中性脂肪と動脈硬化

動脈硬化症
2023年01月13日
動脈硬化net 編集部
動脈硬化net 編集部

動脈硬化の原因のひとつに脂質異常症があります。近年は生活習慣の欧米化が進み、LDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い人が増えており、空腹時以外でも中性脂肪の値が高いと、さまざまな病気のリスクになることがわかってきました。

中性脂肪とは?

中性脂肪(トリグリセライド)と聞くと、「脂肪(脂質)」の摂り過ぎと考える人がいるかもしれません。しかし、中性脂肪が増えるのは、脂肪(脂質)の摂り過ぎだけが原因ではありません。 私たちが身体を動かすのに必要なエネルギー源は、食事から摂った糖質(炭水化物)、脂質、タンパク質からつくられています。摂取したエネルギーと消費エネルギーが同じであれば、プラスマイナスゼロですが、摂取したエネルギーが消費エネルギーを上回れば、エネルギーは余ってしまいます。余ったエネルギーは、肝臓で中性脂肪につくり替えられて蓄えられるとともに、内臓脂肪や皮下脂肪として身体に蓄積していくのです。つまり、中性脂肪が増えるのは、主に過食によって食事から摂ったエネルギーと消費エネルギーのバランスが崩れている状態にあるのです※1-3。したがって糖質やアルコールのとり過ぎでも中性脂肪は高くなります。

食後の中性脂肪が高い場合も要注意※4

中性脂肪の値が高い状態が続くと、LDLコレステロールが小型化して動脈硬化をおこしやすいタイプに変わり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などを発症するリスクが高くなるとされています。具体的には血液検査で次の値を超える場合には、治療が必要となります(表1)。

表1 中性脂肪(トリグリセライド)の基準値

*基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし水やお茶などのカロリーのない水分の摂取は可とする。空腹時であることが確認できない場合を「随時」とする。

中性脂肪は、食後に値が上昇しやすいため、基準値は採血のタイミングが空腹時かそれ以外かによって異なります。基準値は、空腹時150mg/dL以上、空腹時以外(随時)の採血の場合、175mg/dL以上で、いずれかが基準値を超えると将来の狭心症、心筋梗塞などの心血管疾患、脳梗塞などの発症や死亡リスクが高くなることがわかっています。

中性脂肪の判定は、これまで空腹時の採血結果のみで行われていましたが、空腹時以外の血液中の中性脂肪値が高くても、心血管疾患の発症リスクが高いことなどがわかってきました。

そのため、2022年に空腹時以外(随時)採血時の中性脂肪の基準値が定められました。現在は空腹時の中性脂肪が基準値内であっても、空腹時以外(随時)が基準値を超える場合には、高トリグリセライド血症と診断されます。 狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの大きな病気を防ぐためには、空腹時、空腹時以外を問わず、動脈硬化を進行させる原因となる中性脂肪を基準値内に維持することが重要です。



監修:岡村 智教 先生
慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学

筑波大学医学部卒業。大阪府立成人病センター循環器検診科、滋賀医科大学福祉保健医学講座助教授、国立循環器病センター予防検診部長などを歴任し、2010年に慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教授に就任。健康日本21(第二次)推進専門委員、動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版作成委員長などを務めた。

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